西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、東京五輪での試合に臨む野球日本代表チーム・稲葉篤紀監督に注文を付ける。
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東京五輪の野球日本代表24選手が6月16日に発表された。五輪で野球が採用されるのは2008年北京大会以来、3大会ぶり。当時を知るメンバーで唯一、楽天の田中将大が選ばれた。
「何でこの選手が選出されて、あの選手が入っていないのか」という思いは、ファンそれぞれがお持ちでしょう。ファンの方々、それぞれが監督であり、コーチである。そういった意見が野球界へのエール、熱につながるものだと思う。
たとえば、中日の柳裕也は5勝2敗で防御率は1点台である。選出されながら調子の上がらない巨人の菅野智之や中日・大野雄大と比べてどうなのだろう。オリックスの宮城大弥も素晴らしい球を投げている。救援陣を見ても、楽天の松井裕樹は立派な成績だ。
野手を見ても、19本塁打、58打点の巨人の4番、岡本和真が外れた。三塁はヤクルト・村上宗隆よりも岡本の守備力が上だろうが、村上の守備力も向上している。一塁を見た場合には楽天・浅村栄斗の勝負強さが上との判断もあっただろう。その浅村は二塁もできる点もプラスに働いている。
足という部分でも、今回はソフトバンクの周東佑京のようなスペシャリストを外した。これも24人という戦いを考え、決断したこと。特に国際大会でけん制の間合いを測りづらい投手も多い。当然、代走後の守備力という点も考え、見合う選手がいなかったということであろう。
「今」をとるのか「実績」を加味するのか。さらに数字だけでは測れないものを加味するのか。五輪という特殊な戦いを自ら体験した稲葉篤紀監督が、決断したこと。確固たる信念があればいい。選手選考の可否は、結果がすべてである。負ければ批判にさらされるし、勝てば文句は出ない。それは2013年の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で投手総合コーチを務めたときに、身をもって感じたことである。