稲葉監督には、絶対にぶれてほしくないことがある。それは、大会に入れば実績は関係ないこと。たとえば、菅野の調子が上がらないのであれば、想定する試合の先発から外すべきである。WBCは約3週間の戦いとなるが、五輪の野球は10日あまり。その短期間の中で、調子の見極めこそ大切である。決断に自分の考えをしっかりと持ち、あいまいにしない。そして間違ったことがあるなら、引きずらず即座に修正すればいい。

 今大会は6カ国しか参加せず、予選の段階で台湾や中国、オーストラリアが辞退した。この新型コロナウイルスがまん延する状況下で、ベストメンバーを組める外国チームはおそらくないであろう。「世界大会とはほど遠い……」との意見も、ごもっとも。五輪開催に否定的な声も選手は感じているであろう。ただ野球界に身を置く多くは、東京五輪で日の丸をセンターポールに掲げることを一つの目標にしてきた。そのために多くの人が尽力してきた。その思いも背負って「侍ジャパン」には悔いなく戦い抜いてもらいたい。

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝

週刊朝日  2021年7月2日号

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