滝田栄(所属事務所提供)
滝田栄(所属事務所提供)

 伊東さんは、平成の家康像をこうみる。

「謹厳実直な律義者という表の顔だけでなく、腹に一物ある『謀略家』、さらに内野さんの家康のようなユーモラスな一面を強く打ち出すようになりました。つまり、表裏がある人物、凡庸でありながら、這い上がっていく人物像が定着していったように思います」

 そして2023年1月。滝田栄の「徳川家康」から約40年の時を経て、大河の単独主人公としての家康が帰ってくる。主演は松本潤。「リーガルハイ」や「コンフィデンスマンJP」の古沢良太が脚本をつとめる「どうする家康」だ。ペリーさんは大いに期待していると語る。

大河ドラマには、史実を織り交ぜながら脚本家がどういう人物造形をしていくのかという楽しみ方もあるんです。そう考えると、あの古沢さんが、普通の家康、ホトトギスを待っているだけの家康をやるわけがない。しかも、タイトルが大河で初めて問いかけ型の『どうする』ですからね。今川家に人質に取られて苦労した幼少期から、常に『どうする』と選択肢を突きつけられながら何かに気づいていく家康を描いていくのでしょう。大きなテーマにどう向き合っていくのか、楽しみです」

 令和初の主役・家康ということにもなる。伊東さんは言う。

「この家康が『令和の家康像』の指針になると思います。責任重大ですが、どんな演技を見せてくれるか、今から楽しみです」

 どうする、松潤。

■「寺での生活で見つけた新たな家康像」

1983年「徳川家康」主演 滝田栄さん

 いわゆる“狸親父”的なそれまでの家康のイメージとは違う、端正なルックスの滝田栄さん。1983年放送のNHK大河ドラマ「徳川家康」の主役として抜擢されたとき、「なぜ滝田が家康なんだ!?」という声が世間にあったという。

「僕自身も『なぜ僕が家康なんだ!?』と思いました(笑)。それまでさまざまな役を演じてきましたが、家康という人物のイメージは狡猾、狸親父、気が弱い……表層的なものばかりでその中に入る手がかりが全くつかめない、役作りにおいてこれまでの方程式のようなものがまったく通用しない感覚でした」

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