津川は2000年の「葵 徳川三代」(ジェームス三木脚本)でも家康を演じている。
平成に入り、92年には緒形直人主演で大河のイメージを一新した「信長 KING OF ZIPANGU」が放送。郷ひろみが家康を演じた。
「緒形さん以外にも菊池桃子、的場浩司、仲村トオル、中山美穂らそうそうたるメンバーがそろい、『トレンディー大河』とも言われました。そこにヒロミゴー(笑)。緒形さんたちより先輩格の郷さんが、津川さんなどが見せる貫禄とはまた違う、独自の貫禄ある家康を印象づけました」(ペリーさん)
96年、竹中直人主演「秀吉」で西村雅彦(現・まさ彦)が演じた家康が、これまでのイメージを覆したと伊東さんは言う。
「竹中さんの秀吉と真田広之さんの三成の“演技合戦”的側面もあった作品。西村さんはその脇にいながら、腹黒さやずるがしこさを表現し、実に強いクセのある家康像を披露してくれました」
2006年には「功名が辻」で西田敏行演じる家康が登場。イメージぴったりだが、家康役は初だった。11年の「江」では、北大路欣也が威厳たっぷりに演じた。このときのインパクトからか、「青天を衝け」(2021年)でも、北大路家康がナビゲーター役で登場したのが記憶に新しい。
■待つだけの家康やるわけがない
16年、内野聖陽が「真田丸」で演じた家康について、伊東さんは「これこそ新しい時代の家康像ではないでしょうか」と評する。家康を主人公にした伊東さんの作品『峠越え』(2014年)では、英雄でもなく腹黒くもない、「凡庸な」家康が描かれていたが、「真田丸」で描かれた家康にも、そうしたイメージに通じるものがあったという。
「油断もするし失敗もするユーモラスな家康像を、内野さんがつくりあげました」(伊東さん)
ペリーさんも、内野家康の印象は強いと語る。
「07年の『風林火山』のときは主役だったからあまり無茶はできなかったと思いますが、脇で自由にできる『真田丸』で、あの家康! 伊賀越えのときに転ぶシーン、最高でした。おっちょこちょいで、斉藤由貴演じる側室の阿茶局に『爪を噛まない!』と怒られて。それでいて『てへ』みたいなお茶目な面があり、一方で主人公の最大の壁となって最後は勝つ側になる。毎週内野さんが出てくるのが楽しみでした」