食器棚の一角。すべているモノだと思い込んでいました/ビフォー
食器棚の一角。すべているモノだと思い込んでいました/ビフォー

 次男は、暇な時間ができたときに突然「部屋を片づける!」と言い出し、その勢いのままに自分の部屋をきれいに片づけました。リビングやダイニングの片づけにも積極的に参加。

 2人とも彼女のがんばる姿を見てくれているのでしょう。

「子どもたちの身のまわりのことを、全部私がやるのが当たり前だと思っていたんです。自分の理想を押し付けるようにしたことも。でも片づけを進めるうちに、私が子どもたちの成長を止めてしまっているかもしれないと気づきました」

 今まで全部自分だけで抱え込んでいたことを、少しずつ手放してみることにしました。家のことは子どもたちにできることをお願いし、困ったことは夫に相談します。実家のことは父親に頼ったり、ケアマネージャーさんに連絡したり。介護タクシーなどのサービスも受けるようにしました。

「一緒にプロジェクトに参加した仲間にも助けられました。これまで自分の気持ちを表に出すことはあまりなかったけれど、思い切って話してみたことに共感してくれて、アドバイスもくれて……」

 片づけが終わった今、家族を含めたまわりの人たちの協力があって生活が成り立っていると感じています。もしプロジェクトに参加していなければ、あれもこれもと1人で全部やろうとしてパンクしていたかもしれません。

「思い切ってあのタイミングで片づけられて本当によかった。片づけは未来の自分へのプレゼントだったと思います。今の自分が1番若いから、やりたいことを先延ばしにしない方がいいですね」

 少し余裕ができたので、彼女は改めて実家を片づけ始めました。父親がすごく喜んでくれるので、両親の気持ちに寄り添ってさらに使いやすくしていきたいそうです。

料理やちょとっとしたモノの一時置きスペースができました/アフター
料理やちょとっとしたモノの一時置きスペースができました/アフター

 さらに、今後の自分の将来についても話してくれました。

「これから何をしたいのか、どう暮らしていきたいのか、いろいろ考えているんです。今まで家族に目が向いていた分、自分と向き合ってみます」

 親の介護や子どもの反抗期など、人生の中でどうしても大きな負担を感じるタイミングはやってきます。そうなる前に生活の基盤が整うと家事や育児がスムーズになり、多少なりとも負担の軽減につながるでしょう。私は片づけを通じて、彼女のような方たちをサポートしていきたいと考えています。

●西崎彩智(にしざき・さち)/1967年生まれ。お片づけ習慣化コンサルタント、Homeport 代表取締役。片づけ・自分の人生・家族間コミュニケーションを軸に、ママたちが自分らしくご機嫌な毎日を送るための「家庭力アッププロジェクト?」や、子どもたちが片づけを通して”生きる力”を養える「親子deお片づけ」を主宰。NHKカルチャー講師。「片づけを教育に」と学校、塾等で講演・授業を展開中。テレビ、ラジオ出演ほか、メディア掲載多数。

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