会社の給料と同じで、年金でも大事なのは、税金などが引かれた後の「手取り」。「税金+社会保険料」は年金額が高くなるほど増えるが、手取り額も同様に高くなる。また、目まぐるしい制度変更についていけないと、思わぬ不利益を被ってしまう。混迷の時代、年金受給で勝ち抜くには──。
【前編/損益分岐点で驚きの結果 年金繰り下げ受給の判断基準】より続く
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税金や社会保険料には、もう一つ別の側面もある。ある年金制度に詳しい専門家が指摘する。
「いろいろな制度が毎年のように変わるので、気をつけてみていないと不利益を受ける可能性があります」
財政状況が深刻になるなか、税金も社会保険料も「取れるところから取ろう」とする動きが強まっている。注意していないと、制度変更などで手取りがさらに減ってしまいかねないというのだ。
例えば、税制面での「退職所得控除」。退職金課税のときに使われ、多くの退職者がこの制度のおかげで巨額の退職金を無税で受け取ってきた。
とにかく同じ会社に長く勤めると、有利になるようにできている。1年勤めるごとに控除額が積み上がっていくが、勤続20年までが1年40万円、20年を超すと同70万円にも増える。
勤続40年ならば、控除額は2200万円(40万円×20年+70万円×20年)にもなる。しかも課税される場合、対象になるのは控除額を超えた金額の半分だ。
終身雇用が崩れ、働き方も多様化する。かねて退職所得控除の改正の必要性が指摘されてきたが、年金制度に詳しい専門家によると、すでにこの税制、大きな“風穴”があいているという。
「最初の風穴は13年でした。お役人の天下り批判に応える形で、勤続5年以下の役員の退職金課税の取り扱いが変わりました。来年から、それがもう一歩進みます。勤続5年以下なら一般社員の退職金課税も同じ取り扱いになる部分ができるんです」
「取り扱いが変わった」とは、最終的に課税されるとき、その対象が控除額を超えた金額の2分の1だったものを「2分の1にするのを認めない」ことを指す。小さな変更のようだが、意外と“曲者”なのだという。