そんなとき、読書が好きな栗山監督が『論語と算盤』のページをめくっていたら、渋沢栄一からこのようなメッセージが浮かび上がってきました。
「目先にすぐ成果が出ないとしても、それはまだ機が熟していないだけだ。タイミングがまだ合っていないだけなのだ。事をあきらめることなく、忍耐強く進めるべき」
この栄一のメッセージから気持ちを持ち直したご自身の経験から、栗山監督は日ハムに入団若手選手の1年目のシーズンが終了したときに、必ず全員に「論語と算盤」を渡していらっしゃるようです。
プロの野球選手の若手ですから、「意味わからない」と読まずに放っておく人もいるでしょう。しかし大谷選手は「監督、これ難しいですね」と言いながらもマンダラートに書き込んでくれていました。その後、もちろん[論語と算盤]との因果関係は証明できませんが、大谷選手は大リーグで大デビューして、トミージョン手術などスランプを得ながらも、現在は大活躍中で多くのファンやコメンテーターの度肝を抜いています。
栗山監督は2018年に「育てる力」という本を出版されています。栗山監督が「論語と算盤」を読み、プロ野球の監督として、その解釈をご自身の言葉であるkuriyama’s memoとして表現されている興味深い内容の本です。
自分が最も印象に残った監督の言葉があります。それは、渋沢栄一の思想を一言で表し、そして、今の日本社会で必要な言葉だと思います。
「見えない未来を信じる力」
日ハム入団当時、大谷選手の世評は「二刀流は無理」「プロでは通用しない」というものでした。しかし、栗山監督は「人間は、なぜ前例がないものを否定するんだ?」「なぜ見えない未来を、信じようとしないんだ?」と逆に疑問を感じ、批判には屈せず、大谷選手の二刀流を認めて育成にあたります。
現在、米国の野球ファンまでが「オーマイガッ!」と絶賛する大谷翔平選手の功績には、「見えない未来を信じる力」があるからに違いないと私は思います。