その「論語と算盤」の第一章、第一項、つまり、本書の1丁目一番地に登場するのが「論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの」という教えです。

 「私は不断にこの算盤は論語によってできている、論語はまた算盤によって本当の富が活動されるものである、ゆえに論語と算盤は、甚だ遠くして甚だ近いものであると始終論じておるのである」

 正しいことをわきまえて行動することと利益を追求行動の関係性は遠く見ても、実は近いものであるという考えです。その答えは簡単ではないかもしれない。けれども問い続けるのが大事であるということでしょう。

 そして、「論語と算盤」という目標を達成するために最も重要な要素とは何か。それは、「論語と算盤」のど真ん中の存在である「と」の力です。「と」は、一見すると矛盾しているようなものを組み合わせることによって新しいものを生み出す力と考えることができます。

 イエスかノー、白か黒、投手か打者という「か」の力に留まることなく、いずれ合わせることができる「と」の力。「論語と算盤」はこの力を要求していて、この力が、これからの未来を拓くために重要である。このように解釈できます。

「か」の力は区別して選別して進める、効率性を高める合理的な力であります。一方、「と」の力は、矛盾、難しい、無理、無駄のように見えます。ただ、正しい答えや成果を直ちに見出せなくても、忍耐強く努力と試行錯誤を繰り返すことによって、新しいクリエイション、創造が生じます。

 既に存在している状態を比べて進める「か」の力だけでは新しい創造はないのです。大谷選手の二刀流は、まさに「と」の力。我々に新しい感動を与えてくれました。

 大谷選手に「論語と算盤」を読むように勧めたのは栗山英樹監督でした。日ハム監督に就任2年目のとき、チームはリーグ戦で最下位に沈みました。新米の監督は悩みました。自分はプロ野球の監督に務まらないかもしれなという不安も頭に過ったようです。

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日ハムの栗山監督が薦めた本