一人暮らしを始めるまでまったく料理をしたことがなかった私が、トロトロのオムライスを作るのは実にハードルが高い挑戦でした。今のようにネットにたくさんのレシピが載っている時代ではなかったため、本屋で料理本を何冊も買いました。結果、中途半端なオムライスばかりできてしまいました。

 卵トロトロのオムライスを作りたくて、1週間ほどオムライスばかり食べ続ける生活を送りました。

 卵ノートロトロのオムライスばかりでオムライスが嫌いになりかけたある日、料理音痴な私にある名案が思いつきました。

「レストランに修業に行こう」

 レストランに修業に行けば、卵トロトロオムライスができる。なんならオムライスだけでなくほかの料理も修業ができる。パスタなんかも作れたらかっこいい。ナポリタンしか食べたことがなかった私にとって、カルボナーラが作れるようになるのは当時最大の憧れでした。

 20代前半の若者の妄想は止まりません。

「そうだ、調理師の免許も取ってしまえ」

 調理師免許を取ってモテモテになる自分を想像し、料理に対するモチベーションは最高潮となりました。

 それから、スーパーの掲示板に貼ってある求人情報の中に「厨房業務」を血眼になって探し、たどり着いた場所が「ドンポット」という洋食屋さんでした。

 調理師免許を取得するためには、実務経験と試験をパスしなければなりません。実務経験は週に4日以上、一日6時間以上を2年以上が必要です。私は授業もそこそこにせっせと「ドンポット」にアルバイトに通いました。

 調理の現場は大変なものでした。お昼や夜のご飯時、厨房は戦場と化します。カルボナーラを作りつつ、オムライスを仕上げ、ドリアの火加減を確認する。夏場は汗だくでヘトヘトになるまで働きました。

 筆記試験に関しても、医学の勉強の合間に料理の勉強を行いました。

 その結果、医学部の学生にして調理師免許を取得しました。

 その後、基礎研究をはじめることになるわけですが、料理と研究はとてもよく似ていることに気がつきます。

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