劉教授はインターネットの普及により情報化が進み、様々な情報があふれるなか、若者は選択をすることの難しさに直面していると指摘。「寝そべり」はそうした人びとの現状解決方法の一つだと分析する。
また、「寝そべり」が「企業の利益、市場の拡大、個人能力の上昇という意味ではマイナスになる」としつつ、「青年らによる社会生活における表現の一つでもある。社会生活の多様化、多元化、差別化を表している」として「善しあしの評価を下すのは難しい」とも話す。
ただ、「寝そべり」に対する中国社会の反応はおおむね冷めたものだ。中国メディアの南方日報は「『寝そべり』は恥だ」と切り捨てた。この記事は、国営新華社通信を含む多くのメディアによって転載された。
こうした論調は、共産党政権の考えを反映しているとみることもできる。劉教授の指摘するとおり、結婚や出産を望まず、消費意欲もない「寝そべり族」たちは国家の経済発展に寄与しないからだ。
「社会主義現代化強国」を目指す中国だが、高度経済成長期はすでに終わりが見え、曲がり角を迎えつつある。政府によると、2013年に結婚を届け出た夫婦は1347万組いたが、20年には813万組にまで減少。出生数の減少にも歯止めがかからず、20年の出生数は約1200万人でピーク時の半分以下だ。
かつては人口増加を抑えるための出産制限策をとってきた共産党は今年5月、1組の夫婦につき3人まで子どもを産んでいいとする緩和策に踏み切った。だが「寝そべり族」の表面化が表しているように、若者の結婚や出産への意欲は高くはない。制限緩和がどこまで効果を発揮するかは未知数だ。
発展に伴って生まれた「寝そべり族」とどう向き合うのか。さらなる国力向上を目指す中国共産党にとっては、難題になりそうだ。(朝日新聞中国総局・高田正幸)
※AERA 2021年7月26日号より抜粋