小川:はい。
林:それも書きおろしですか?
小川:基本はそうですね。
林:いつごろ出そうなんですか。
小川:いつなんでしょうね。予定を決めるのが苦手で、約束するのも苦手で、なるべく約束しないようにしてるんです。
林:小川さん、少女のころから憧れていた作家になって、本も売れて、生き方に憧れるファンの方もいっぱいいて、人生満足ですか。
小川:はい、満足ですね。あした死んでもいいかなという。
林:おいおい、まだ若いんですから(笑)。あの賞がほしいとか、そういうことは考えないんですか。
小川:それはあんまりないです。でも、まだやったことがないことをしたいなという欲はあります。
林:たとえば?
小川:山で暮らしたことがないなと思って、八ケ岳(山梨県)に土地を見に行きました。小屋を建てて仕事場にしようと思って。そのためには車が必要なので、去年、教習所に通いました。無事免許もとって、いまその計画を進めています。
林:書いてる本とご本人が、こんなにぴったり一致してる作家もめずらしいですよ。きょう初めてお会いしましたけど、私がイメージしていたとおりの方でした。
小川:ハハハハ、そうですか。
(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)
小川糸(おがわ・いと)/1973年、山形県生まれ。2008年、『食堂かたつむり』でデビュー。同作は映画化され、英語をはじめ、フランス語、スペイン語、イタリア語など多言語に翻訳される。11年にイタリアのバンカレッラ賞、13年にフランスのウジェニー・ブラジエ賞を受賞。『つるかめ助産院』『ツバキ文具店』など著書多数、エッセーや絵本なども手がける。その丁寧なライフスタイルも、多くの支持を得ている。現在、『ライオンのおやつ』(ポプラ社)がドラマ化され、NHKのBSプレミアムで放映中。
※週刊朝日 2021年7月30日号より抜粋