NHK大河ドラマ『青天を衝け』の主人公で「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一。渋沢家五代目の渋沢健氏が衝撃を受けたご先祖様の言葉、代々伝わる家訓を綴ります。
【写真】「できる」「できない」「やりたい」「やりたくない」の軸
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人類は数多くの戦争を繰り返してきて局部的な破壊や悲劇は大きかったものの、新型コロナウイルス感染症のパンデミックほど広範的なスケールで世界の人々の日常生活を脅かした危機は前代未聞です。
その中、特に犠牲になったのは社会の高齢者や貧困弱者という傾向があり、経済界では大企業と比べると中小・零細企業の資金繰りが厳しい状況に陥りました。
先進国ではワクチン接種が広まって重傷者・死者は減少している昨今でも、途上国・新興国など世の中の多くが未だに逆境に立たされています。
およそ500社の会社を設立したと言われる渋沢栄一ですが、全てが順風の人生ではなく多くの逆風も体験しています。栄一の時代にはコレラやスペイン風邪というパンデミックが世界に広まっていて、前妻の千代をコレラで失っています。
ただ、公私の逆境に屈することなく、多くの実績を後世に残した栄一の言葉に我々は耳を傾けるべきではないでしょうか。書籍『論語と算盤』の「大丈夫の試金石」という説で栄一は「自然的逆境」に立った場合に以下の心構えが大切であると示しています。
・「足るを知る」-これは、何を失ったことにより、何が有るかに気づいて感謝することでありましょう。
・「分を守る」-やるべきことをきちんとやって身を守ることです。例えば、うがい、手洗い、マスク着用、「密閉」「密集」「密接」を避ける等です。もちろん、ワクチン接種も、この類に入ります。
・「天命であるから仕方ない」-ジタバタするより心を平静に保ち、場合によっては思い切って断念する。
つまり、自然的逆境のときには正しく恐れることが大事であるということになります。 ただ、新型コロナウイルスは自然的な存在かもしれませんが、コロナ禍は「人為的な」側面もあります。
人と人の間、あるいは人と社会の間で生じる人為的な逆境の場合、「自分からこうしたい、ああしたいと奮励さえすれば、大概はその意のごとくになるものである」という栄一は提唱しています。