一般的に我々は「できる」「できない」という軸で物事を判断する傾向があります。

「できない」あるいは「できていない」という否定を判断基準にすると幸福な生活を送ることができない、と渋沢栄一は指摘します。

「しかるに多くの人は自ら幸福なる運命を招こうとはせず、かえって手前の方からほとんど故意にねじけた人となって逆境を招くようなことをしてしまう。それでは順境に立ちたい、幸福な生活を送りたいとて、それを得られるはずがないではないか」

 だから栄一は「自分からこうしたい、ああしたい」、つまり、自分が「やりたい」「やりたくない」の軸も大事であると唱えているのです。

 では、横軸に「できる・できない」、縦軸に「やりたい・やりたくない」の四象限で整理してみましょう。

 この場合、ベストポジションは当然ながら、右上の「やりたい」「できる」になります。

 一方、「できない」ところですが、左下の「やりたくない」ポジションは順位がそれほど高いところではなく、場合によっては整理して捨てても良いところです。

 問題は明らかに右下の「できる」のに「やりたくない」ポジションです。勉強ができるのにやりたくない子供。仕事ができるのにやりたくない部下、あるいは上司。これらは改善しなければ状態です。

 しかし、我々はほとんどの場合、左上のポジションいるのではないでしょうか。「やりたい」ことはたくさんあります。

ただ、お金がないから「できない」。

時間がないから「できない」。

制限があるから「できない」。

経験がないから「できない」。

我々は、できないことばかりです。 

 このポジションにいた場合に「できる」「できない」の軸で判断すると、我々はできないところにいます。だから、元々は「やりたい」ことができないので、あきらめて「やりたくない」へと沈んでしまうかもしれません。

 子供の頃、プロ野球選手や宇宙飛行士になりたいという人もいたでしょうし、歌手やケーキ屋さんという人もいたでしょう。でも、実際には子供の頃の夢を追いかけて、本当にそうなった人というのは、極めてまれです。「できる」「できない」という軸で自分の人生を考えたので、どこかで挫折してしまったからです。

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「やりたい」、「やりたくない」の軸