内村選手は今年で32歳。若い選手の活躍が目立つ体操では、決して若くはない。内村選手も自身のことを「大長老」と呼ぶほどだ。ファンの間からは「引退」を心配する声があがっている。池谷さんはこう見る。

「身体的にしんどいというのは確かですね。スポーツの世界では年齢の影響は大きい。内村選手はリオ五輪で引退してもおかしくなかったと私は見ています。今年の10月に世界選手権が彼の地元の北九州市で開かれますが、そこまで気持ちがもつかどうか。『悔しいからやる』というのはありえますが、本人次第ですね」

 他方で、重量挙げの三宅宏実選手はスナッチ(重量挙げ競技の一種目)で74キロをあげたものの、ジャーク(同)で3回挑戦するもいずれも失敗。記録を残すことなく、大会を終えた。競技後、引退を表明した。

 三宅選手は12年ロンドン五輪で同競技の銀メダル、16年リオ五輪でも銅メダルを獲得していた。リオ五輪では腰痛の痛みに苦しんでいた。引退も考えたが、日本で開催される東京五輪を目指し、現役続行を決断したと言われる。

 池谷氏はこう語る。

「いま医療の技術があがっているので、選手の寿命も長くなってきています。とはいっても、多くの選手が怪我をきっかけに引退を決意することは多いです。私は22歳でバルセロナ五輪後に引退しましたが、大会前から身体の限界を感じていました。練習していて自分でわかるんですね、これが『限界だ』って。三宅選手も同じように感じて引退を決意したのではないでしょうか」

 選手にとって東京五輪は大きな節目だ。今後、各選手の去就にも注目が集まりそうだ。

(文/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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