さらに兄・一二三は言う。「このようなすごく大変な時期でオリンピック開催をして僕たち選手はありがたいです」。妹・詩も「本当に4年間、この大会だけを目指して日々で努力してきたいので、こうやって報われてよかったです」と素直な気持ちを明かした。この言葉は、今大会に出場しているすべてのアスリートたちの言葉でもあるだろう。現状、コロナ禍での東京五輪開催に対する不安、否定的な意見が当然、多くある。だが、この日の阿部兄妹の戦い、そして試合後の言葉を聞くと、開催することの意義が間違いなくあることを、五輪は選手ファーストであるべきことを、多くの日本人が改めて感じることができたことだろう。

 インタビューの最後、日本のファンへ向けて「みなさん本当にこういう状況の中応援ありがとうございました。これからもっと努力して素晴らしい金メダリストになれるように頑張ります」と宣言した妹・詩。「これからもオリンピックチャンピオンに恥じないように頑張っていくので応援よろしくお願いします」とは兄・一二三。礼に始まり、礼に終わる。ともに柔道家として、決して浮かれることはない、更なる成長を今後も予感させる言葉を残した。大会自体はまだ3日目だが、この兄妹金メダリストの誕生が、東京五輪のハイライトの一つであることは、間違いないだろう。

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