柔道男子66キロ級の阿部一二三と女子52キロ級の阿部詩が、史上初のきょうだい「同日金メダル」を獲得した。
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まずは妹だ。初戦となる2回戦で釣腰での技ありから抑え込んで合わせ一本勝ち。準々決勝では隅落での返し技ありで優勢勝ち。準決勝は延長の末に鮮やかな内股で技ありの勝利。そして決勝戦も延長4分、試合時間8分に及ぶ激闘の末に崩袈裟固で一本勝ち。女子52キロ級では日本人初となる金メダルに輝いた。「私が52キロ級で絶対に金メダルを取ってやろうという気持ちで臨みました」と気迫十分に最後まで集中力を切らさず。「初めてのような感覚が舞い降りてきました」と、うつ伏せたまま両方の拳で何度も畳を叩き、歓喜の涙を流した。
それに兄も続いた。初戦の2回戦を大外刈り一本勝ち。続く準々決勝も再び袖釣り込み腰と見せかけての大外刈りで優勢勝ち。準決勝では、潜めていた得意の担ぎ技である一本背負いを決め切って一本勝ち。そして決勝戦では、再び大外刈りで技ありを奪い、そのまま相手を寄せ付けずに終了の合図。「今日は落ち着いて冷静に自分の柔道ができて、しっかり前に出て一本を取りに行く柔道を出せた」。試合中も試合後も一切表情を変えることがない貫禄の金メダルだった。
この日の阿部兄妹には、共通点が多くあった。ともに金メダル最右翼で相手からのマークが非常に厳しかった中、自らの柔道を貫き、危なげない“王者の戦い”を見せたこと。そして金メダル直後のインタビューコメントで開口一番、周囲への感謝の言葉を発したことである。
「まず、やはりこのような状況で、たくさんの人のおかげでこのオリンピック開催までたどり着いて、畳の上ではガッツポーズとか笑顔はと思っていたんですけど、いろんなこと考えると、たくさんの思いがこみ上げてきました」と兄・一二三。妹・詩も「東京オリンピックが開催されるかわからなかった状況でしたけど、このように開催していただいて、金メダルを取ることができた」と、最後まで開催が危ぶまれていた東京五輪開催が無事に開催されたこと、例え無観客でも自分の柔道を披露する舞台を整えてくれたことに対して頭を下げた。