「いまの感染率の状況が継続すると、東京五輪後には平均2千人超になるのは間違いない。五輪やデルタ株の蔓延だけではなく、学校などの夏休み、お盆の影響で感染率はより高くなる可能性はあり得ます」
感染症の専門家からはより厳しい見方が出ている。京都大の西浦博教授(理論疫学)はNHKの取材に対し、8月上旬には新規感染者数は「1日3千人を超す」と主張している。和田教授も「近いうちに週平均3000人だけでなく、それ以上もありえる」、堀教授は「お盆過ぎには平均3500人になる可能性は高い。(8月下旬にある)パラリンピック中止もあり得るのでは」と言う。
一方、感染者数ではなく、入院患者数や重症者数が重要だという指摘もある。しかし、感染者数が増えれば、入院患者数や重傷者数も必然的に増える。それが医療のひっ迫につながることになる。第4波時の大阪で起きたような、症状が急変して救急車を呼んでもどこの医療機関も対応できないという悲惨な状況を多くの専門家が懸念している。
いまできることはあるか。和田教授は「家族以外との接触を減らしてステイホームするのは感染拡大を止めるのに有効。首相が国民に伝わる言葉で目標を定めて呼びかけるべきだ。今やらなければ、多くの救える命が失われることと、さらに事態が長期化することを政治は覚悟しなければならない」と言う。堀教授は、「三密の回避、マスク、うがい、手洗い、黙食などこれまでの感染症対策の徹底をするべき」とした上で、政策の転換を提言する。
「65歳以上の高齢者が2回目のワクチンを接種した割合は7割にもなっており、重症化も少なくなっている。他方で、感染者の7割弱は30代以下の若者になっている。これまでは重症化リスクの高い高齢者を優先してワクチンを打ってきたが、感染拡大につながっている30代以下の若い層を中心にワクチンを打つべきです。ホットスポットに物量を投入するのは感染症対策の基本です」
五輪開催中に政府はどう具体的に動くか。注目が集まる。
(文/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)