しかし、こうした政府の対応について、感染症の専門家からは疑問の声があがっている。順天堂大の堀賢教授(感染症対策)は「五輪の間接的な影響に目をつぶっている」と指摘する。
五輪の「直接的な影響」とは、大会関係者が国内に感染を広げるということだ。東京五輪では大会関係者と一般人を交わらせない「バブル方式」と言われる感染症対策を実施。「穴がある」とも指摘されているが、現時点では五輪関係者の陽性者は抑えられており、直接的な影響はほとんどないとみられている。一方の「間接的な影響」とは、東京五輪を開催したことにより「五輪も開かれているのだから、もう自粛しなくてもいいのではないか」と人々が考えた結果による人流の増加だ。つまり緊急事態宣言が出る中で前回に比べて大きく減らないのは、五輪開催による「気の緩み」などがある、ということだ。堀教授はこう語る。
「五輪の開催によって人流が誘発されている面はある。確かに感染の直接的な影響は限定的だが、間接的な影響はこれから甚大になっていく可能性は高い。直接的な影響だけを見て、間接的な影響について何も言わないのは、詭弁でしかありません」
感染者数はこれからどこまで増えるのか。専門家の間では東京五輪後に感染が大きく拡大する危険性が指摘されている。
27日の感染者数は2848人、28日は3177人だった。ただし、この数字は曜日によって大きく変動することがある。直近7日間の平均で見てみると、1955人。その前の週の平均1278人から大きく増加している。
今後の予測はどうか。
横浜市立大の佐藤彰洋教授(データサイエンス)のシミュレーションデータによると、8月1日の週は1日平均2010人、東京五輪が終わる8日の週は平均2122人となり、パラリンピックが終わる9月5日の週には平均2774人と3千人目前となると予測している。
ただし今回のシミュレーションは7月12日時点の感染率を使っているため、感染率がこれから高まれば、より大きな数字が出ることもありえる。佐藤教授はこう説明する。