「猛暑」の今夏。暑さでダメージを受けるのは人間だけじゃない。大事な家族の一員であるペットも暑さに弱く熱中症になりやすい。どんな症状が出るの? 対応は? 予防できる? そんな疑問にお答えします。
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コロナ禍でできた家時間を楽しむため、ペットを飼い始めた人もいるだろう。千葉県在住の会社員Aさん(50)もその一人。この春、ツヤツヤした黒毛が特徴のミックス犬を新しい家族として迎え入れた。
「今の心配ごとは、犬の熱中症。知り合いからペットもかかるって聞きました。人の熱中症とどう違うのかとか、どんな症状が出るかとか。予防法も知りたい」(Aさん)
日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクトが、2019年7月に全国の犬の飼い主(20歳以上)に対して実施した調査では、回答した325人の約4分の1にあたる79人が、愛犬の熱中症を経験していた。その一方で、約1割が犬の熱中症予防を「特に何もしていない」、約2割が「具体的な応急処置については知らなかった」と答えている。
ペットクリニックアニホス(東京都板橋区)院長で、同調査にも関わった獣医師の弓削田(ゆげた)直子さんは言う。
「ペットを譲り受けたり購入したりしたときは、育て方についてたくさんのことを一度に覚えなければならず、熱中症対策までは手が回らない。今の時期は狂犬病やフィラリアの予防のために動物病院に行くことが多いので、そのときに聞いてみるとよいでしょう」
今回、本誌ではペットとして飼うことの多い犬と猫の熱中症について取り上げたい。まずは基本的なところから。
「実は同じ哺乳類でも、人より犬や猫のほうが熱中症になりやすいのです」と話すのは、哺乳類の熱中症に詳しい井上動物病院(横浜市旭区)院長の井上快さん。
「なぜなら、犬や猫は汗腺がほとんどなく、汗をかいて体温を下げることができないからです」
彼らは汗の代わりに口を開けて舌を出しハァハァする“パンティング”をすることで、体内の熱を放散させ、冷たい空気を体内に取り入れる。外気温が体温に近い夏はパンティングをしても体が冷えにくいため、熱中症のリスクが高まるという。