芸能人が顔面麻痺を公表することはこれまでにもあったが、ストレスや過労など、発症しやすい人に特徴はあるのだろうか。八木医師は「絶対とは言い切れないが」と指摘したうえで、こう答える。

「確かに発症する人は寝不足であったり、忙しい人であったりということがあるので、過労やストレスがウイルスを再活性化させてしまう要因になることは考えられます。ただ、20代以上になると発症する方に男女差や年代差はあまりなく、誰にでも発症する可能性のある病気です」

 ハント症候群では、耳にヘルペスが出現するため痛みを伴う。ベル麻痺の場合だと基本的には、顔を動かせなくなることが主症状で、痛みが生じることは少ないというが、はじめに異変に気付くのはどういった症状なのだろうか。

「患者さんで多いのが、うがいをしたときに片方から水がこぼれてしまう、という場合です。もちろん、鏡で見て気づく方もいます。口元をいーっとしているのに、片方だけ様子がおかしい、といった具合です。口元の違和感で受診される方が多いですね」

 自分や家族の顔の違和感に気づいた場合、どうしたら良いのだろうか。八木医師によると、末梢性顔面神経麻痺の進行は個人差が大きく、一気に重症化する場合もあれば、緩やかに進行する人もいるという。

「症状の程度によるので一概には言えませんが、どちらにせよなるべく早めに病院に行った方が良いでしょう。特に重症の場合、なるべく早く治療を開始することで神経へのダメージを抑える必要があります。顔面神経は耳を構成する側頭骨という骨の中を通っていますので、耳鼻科でも良いですし、脳神経外科や神経内科など神経を扱っている科でも構いません。どちらを受診しても、まず脳に異常がないかを検査して、問題なければ末梢性ということで治療を始めます」

 ベル麻痺やハント症候群の場合、どういった治療が行われるのだろうか。

「病気が起こると、顔面神経がむくみ、通っている骨の管の中で圧迫されてしまいます。それにより伝導が阻害されて、麻痺してしまうのです。治療としては、そのむくみを取るために、ステロイドを投与することが一般的です。あとは、ウイルスの増殖を抑える薬を服用することもあります」

次のページ 治療期間は?