流れが変わったのは、女子200m個人メドレーで大橋が2冠を果たしたあとと思われがちだが、そうではない。同日に行われた男子200mバタフライで、8レーンから大逆転の銀メダルを獲得した本多灯のレースからだ。
チーム内でも元気いっぱいのムードメーカーである本多のメダル獲得は、チームに大きな勇気を与えた。しかも9位、17位とあと一歩で決勝や準決勝進出を逃すレースが続いていただけに、8位で滑り込みで決勝に進み、そこからメダルを獲得した本多の功績は大きかった。
そこから男子の雰囲気が一変し、200m背泳ぎの入江陵介、男子200m平泳ぎの武良竜也が続いて決勝へ。男子200m個人メドレーでは瀬戸が復活の決勝進出を果たし、同時に萩野公介も決勝に駒を進め、「決勝で大也と一緒に泳げるなんて、神様がくれた贈り物としか思えないなと思って……すごく今幸せです」と思いが溢れた。彼らはメダルは獲得できなかったが、ようやく日本チームに明るい話題を提供してくれた選手たちだった。
最終日、4×100mメドレーリレーには男女で揃って決勝に進出。白血病から復帰した池江璃花子はバタフライを泳ぎ「一度は諦めかけた東京五輪でしたが、リレーメンバーとして五輪の決勝の舞台で泳ぐことができて、すごく幸せ」と喜びが涙となってあふれ出た。
男子は記録的に低調に終わってしまっていた日本チームを救う、3分29秒91の日本新記録を樹立。特に最後の中村克の47秒04というラップタイムは見事のひと言であった。
終わり良ければすべてよし、という言葉がある。後半戦に確かに巻き返したものの、前半戦の苦しい戦いの背景には、明らかに地の利ではなく、地元開催がマイナスに働いていたように思えた。すでに3回は泳いだことがある東京アクアティクスセンター。初日の選手たちの顔には、緊張感がなかったように見えた。普段通り、いつもの大会。そういう雰囲気があった。