体調不良や故障で伸び悩んだ時期もあったが、2017年世界選手権200メートル個人メドレーで日本新を樹立して2位、19年世界選手権は400メートル個人メドレーで3位。東京が初の五輪だった。
2冠を決めた後、200メートル個人メドレー決勝の自由形について聞かれたとき、こう答えた。
「最後は死ぬ気ですけど、でもやっぱり、たかが200メートルでも絶対にバテたりするので、はやる気持ちを抑えながらうまく泳いでいくのが、一番のポイントですね」
大舞台で自分の泳ぎができたのは日本代表ヘッドコーチを務める平井コーチの存在が大きい。
北島康介、萩野公介、大橋と教え子が計7個の五輪金メダルを取った平井コーチの指導法について研究している日体大体育学部の岩原文彦准教授は、こう指摘する。
「平井コーチはライバル選手の動画などをよく見て泳ぎの特徴を把握しています。世界一とも言える準備をするので、相手がどう泳ぐかを予想して、それが外れない。大橋選手は展開が頭に描けるから、不安なく決勝に挑めたはずです」
大橋は大会前に不調が伝えられたが、平井コーチは本誌連載「金メダルへのコーチング」の中で、「最後の最後まで絶対にあきらめない」と書いていた。師弟でつかんだ大きな2冠だった。(本誌・堀井正明)
※週刊朝日 2021年8月13日号