U-24日本代表の久保建英 (c)朝日新聞社
U-24日本代表の久保建英 (c)朝日新聞社
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 8月3日に行われた東京五輪サッカー準決勝のスペイン戦。U-24日本代表は死力を尽くした。予想通りにボールを支配された中でも我慢強く戦い、多くのピンチを迎えながらも体を張って防ぎ、その中で数は少ないながらも得点チャンスも作った。90分を戦って0対0。延長戦の後半は相手陣内に押し込む時間もあった。だが、勝てなかった。

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 総力戦となった試合。勝負を決したのは、「黄金」と称されるアセンシオの左足だった。PK戦突入も考え始めた115分、右サイドのスローインの流れからオヤルサバルのパスを受けると、僅かな隙を突いて鋭く左足を振り抜き、弧を描きながら逆サイドネットへ突き刺さした。吉田麻也は「我慢し続けたんですけど、最後のクオリティが出たなと思います」と振り返ったが、まさにその通り。日本代表でその“クオリティ”を出せる2人、久保建英と堂安律がすでにベンチに下がっており、その反対に今大会で調子は今一つながらも「違いを出せる」選手であるアセンシオがベンチスタートだったというチーム力の差が、最後の最後で勝敗を分けたと言える。

 そこに付け加えるならば、日本の前半の戦いが及び腰だった。そして52分の林大地のゴール右上に外したシュートは勝つために決めなければいけないシュートであった。だが、公平な目で見ると、試合を通してはスペインの方にチャンスが多く、妥当な試合結果だったと言える。

 スペインは上手いチームであるが、今大会は圧倒的な強さを発揮してきたわけではない。グループリーグではエジプトと0対0発進の後、オーストラリアには1対0で勝利し、アルゼンチンとは1対1の引き分け。グループリーグ2位と3位に勝ち点1差の首位で決勝トーナメント進むと、初戦のコートジボワール戦、続く準決勝の日本と2試合連続の延長戦を戦った。90分間の戦いだと5試合で1勝4分なのである。フル代表も大差なく、ベスト4入りしたEUROだが、全6試合を90分勝負で見ると1勝5分。常にボールを支配しながらも決定力不足で勝ち切れない。日本の粘り強さは光ったが、それ以上に「スペインがスペインらしく」戦った試合だった。その意味で、まだまだ世界との差は縮まってはいない。

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