新型コロナ感染症対策の進捗に関する閣僚会議で発言する菅義偉首相(c)朝日新聞社
新型コロナ感染症対策の進捗に関する閣僚会議で発言する菅義偉首相(c)朝日新聞社
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 政府の迷走がまた始まった。菅義偉首相は新型コロナウイルスの急増地域では、入院を重症患者や重症化リスクの高い患者に制限し、自宅療養を基本とする方針をまとめた。しかし「重症になってから入院させては手遅れ」「自宅で症状が急変したら、誰が判断するのか」など、国民の猛烈な反発を招いている。与党からも撤回の要求が出る一方、菅首相は撤回しない姿勢をみせているが、医療現場からはこの方針に対し厳しい声が上がっている。

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 4日、衆院厚生労働委員会で、田村憲久厚生労働相は、立憲民主党の長妻昭議員への答弁でこう答えた。

「海外で感染が拡大しているところは、基本は在宅。在宅で悪化したときに、ちゃんと対応できる体制を組むこと、そして本来入院しなければならない方々が入院できるように病床を確保できるようにするための対応であるとご理解いただきたい。もしそうならなければ、方針を元に戻して、しっかりと入っていただければいい」

 うまくいかなければ方針を撤回して、中等症患者も入院してもらえばいいということだが、これに対し、政治ジャーナリストの角谷浩一さんは「首相の決定を1日で覆すような発言は、普通はありえない」と憤る。

 これまで政府のコロナ対策はずさんな対応が続いてきた。自粛を求める一方で、GoTo事業を推進。結局、停止に追い込まれている。菅首相が「21年前半までに全国民分確保を目指す」としたワクチンは、ここに来て弾不足に。休止になった職域接種も多い。7月には酒の販売事業者に、酒類の提供停止に応じない飲食店との取引を行わないよう要請したが、こちらも関係団体や世論から猛烈な反発を受け、西村康稔経済再生担当大臣は謝罪に追い込まれた。角谷さんはこう指摘する。

「菅首相は自分を司令塔にせずに、西村大臣や河野大臣を担当にさせ、さらに田村厚労大臣もいて、大規模接種で防衛省を巻き込み、地方にワクチンを差配するために総務省をもまきこんだ。関係閣僚が6人もいます。本当なら内閣官房をベースにして特命大臣をおくべきでした。大臣が多すぎて、それぞれの思惑で政策を考えるから、混乱するんですよ。覚悟を持って対策を進める司令塔がいない」

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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