ヤクルト・内川聖一 (c)朝日新聞社
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「いや、ここに立つ日が来るなんて……思ってもなかったので。もうホントにうれしいだけですね、はい」

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 シーズン前半戦も終わりに近づいた7月9日。ヤクルトが広島にサヨナラ勝ちを収めた試合後のヒーローインタビューで、本拠地・神宮のお立ち台に初めて上がる喜びをしみじみと口にしたのは、今季からヤクルトの一員になった内川聖一(39歳)である。

「『僕がやるしかない』というふうに腹をくくって打席に入りましたし、正直、打席の中でちょっと気持ちが悪くなるぐらい緊張しました」

 その緊張に打ち勝ち、9回裏1死満塁からセンター前に放ったサヨナラタイムリーは、2016年4月24日の日本ハム戦でのサヨナラ本塁打以来、5年ぶり通算6本目のサヨナラ打(犠飛を含む)。ヤクルト移籍後では一番の大仕事に、お立ち台から長年の親交があるマスコットのつば九郎に語りかけるように「もうほかに言うことないね。もううれしすぎて、なんか」と、これも移籍後一番の笑顔を見せた。

 大分工高からドラフト1位で2001年に横浜(現DeNA)に入団し、今年でプロ21年目。年齢はともかく、年数ではチーム一の“ベテラン”ということになる。その間、2008年に初の首位打者を獲得すると、FAソフトバンクに移籍した2011年には史上2人目の両リーグ首位打者に輝き、2018年には通算2000安打も達成した。

 だが、そんな日本球界きっての右の安打製造機も、昨年は一軍出場の機会がないままソフトバンクを退団。オフにヤクルトと契約を結び、自ら「僕の野球人生にとって第3章みたいなイメージになると思います」という新たなスタートを切ることとなった。

 コロナ禍の影響で新外国人の来日が遅れていたこともあり、3月26日の開幕戦では「五番・一塁」で2年ぶりの開幕スタメンに名を連ね、いきなり2安打のマルチヒット。高津臣吾監督に「しっかり(走者を)返すこともできるし、つなぐこともできるしというところでは、すごくキーになる五番バッターだと思います。普通に彼が健康でゲームに出続ければ、去年の(課題であった)五番以降の得点(力不足)も解消されるし、元気でゲームに出てほしいと思います」と言わしめた。

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内川が見つけ出した新たな「生きる道」