3月30日にはかつての本拠地・横浜スタジアムで、DeNAを相手に移籍後初打点も記録するなど、そこまでの4試合で17打数5安打、打率.294と、新天地での滑り出しは上々に見えた。ところが好事魔多しとはよく言ったもので、その翌日、スクリーニングPCR検査で陽性判定を受けた選手の濃厚接触者として特定され、2週間の自宅待機を余儀なくされてしまう。

「残念な気持ちも当然ありましたし、起こってしまったことを後悔してもしょうがないという思いと、でもやっぱりっていう思いと……複雑な気持ちがあったのが、正直なところではあるんですけども」

 内川自身、のちにそう心境を吐露した空白の2週間が明け、4月16日の阪神戦(甲子園)で復帰するも、今度は上半身のコンディション不良により離脱。ファームでの調整を経て、5月25日にようやく一軍に戻ってきた時には、「五番・一塁」は4月下旬の合流以来、バッティング好調の新外国人ホセ・オスナのモノになっていた。

 そこからは「右の代打」が内川にとって新たな「生きる道」になる。今季のヤクルトは、49回の代打起用で46打数16安打(打率.348)、1本塁打、11打点の川端慎吾を筆頭に、宮本丈が15打数6安打(打率.400)、松本友も12打数4安打(打率.333、現在は二軍調整中)と、左の代打が軒並み好成績を残している。その一方で右の代打は切り札を欠き、手薄な状態が続いていた。

 そういう意味で、内川はうってつけだった。初の首位打者を獲得した当時、横浜のコーチを務めていた杉村打撃コーチも「彼の場合はそんなにブンブン振って遠くに飛ばすのは必要ないんですよ。だからコンパクトに、彼の持ち味であるセンター中心に広角に打っていくっていうのをやれば、まだまだ通用すると思います」と話すなど、卓越した技術は健在。昨年まで通算129回の代打起用で111打数37安打、5本塁打、18打点、打率.333と、ピンチヒッターとしての実績も十分にある。

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「僕自身のヒットなんて…」