この報告を受けて、米疾病対策センター(CDC)は7月27日、新型コロナウイルスの流行地域では、ワクチン接種を終えた人も、自分の感染予防と他の人にうつさないように、屋内の公共の場ではマスク着用を求める、と方針転換した。また、屋外でも、混雑している場所などではマスク着用を検討するようにとしている。

■従来並みでは抑止不可

 さらに米国政府は8月18日、デルタ株のまん延を受け、9月20日以降、接種後8カ月が過ぎた人に3回目の接種を始めると発表した。これは、ブースター接種(追加抗原刺激)と呼ばれ、時間とともに落ちてくるワクチンの効果を高めるための接種だ。イスラエルはすでに実施中、英国など欧州でも秋に始まる見通しだ。

 背景には米CDCが同日、公表した調査がある。デルタ株が広まる前の今年3月1日~5月9日、移行期の5月10日~6月20日、デルタ株が広がった6月21日~8月1日の3期間について、全米の高齢者・介護施設延べ約3万施設の報告を分析したところ、デルタ株の前に約75%あったワクチン効果が移行期には約68%、デルタ株が広まってからは約53%に低下していたのだ。

 デルタ株がまん延する中、どうすればいいのか。

「変異株もコロナウイルスには変わりませんので、感染の可能性がある人と人の接触をなるべく減らすという大原則は同じです。ただ、これまでより広がりやすいので、従来程度の対策では感染を抑えることができません。昨年4月の最初の緊急事態宣言に比べ、今は個人も自治体や企業などでも緩やかな対策しかとられていません。それを昨年4月の状態に戻せば、それなりの感染抑制が期待できるはずです」(河岡特任教授)

 政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は19日の参院内閣委員会でこう強調した。

「ワクチンは重要な政策の柱だが、柱は1本ではなく、2本、3本、4本必要だ」

(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年8月30日号より抜粋

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