AERA 2021年8月30日号より
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 入院できず、自宅療養中に亡くなる人が後を絶たない。デルタ株がまん延する中、ワクチンだけでは感染爆発を制御できない可能性が高い。AERA 2021年8月30日号から。

【図】都道府県別 人口10万人あたりの新規感染者数はこちら

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 菅義偉首相は緊急事態宣言などの拡大や延長を発表した8月17日の会見で、こう述べた。

「全ての対象者の8割に接種できる量のワクチンを10月初旬までには配分する。ワクチン接種が40代、50代、さらに若い世代に進めば、明らかな予防効果が期待でき、はっきりとしたあかりが見えてくる」

 しかし、日本より早くデルタ株への置き換わりが進んだ米国や英国、イスラエルなどのワクチン先進国で見えてきた現実は、「はっきりとしたあかりが見える」状態とは言えない。

 もちろん、菅首相が言うように、「明らかな予防効果」は期待できる。ワクチンを打たない場合に比べれば、感染を防ぐ効果や重症化や死亡を防ぐ効果ははるかに大きい、という状況は変わらない。

 しかし、デルタ株はワクチンの効果も懸念される。接種が終わればマスクをせずに大勢が集まっても大丈夫だ、という状況にはどうもなりそうにない。

 米マサチューセッツ州公衆衛生局などによると、同州で7月に開かれた夏祭りなどで469人が感染した。9割はデルタ株に感染したと推測されている。感染者のうち346人(74%)はワクチンの最後の接種から2週間以上経った、ワクチン接種の完了した状態だった。

 ワクチンの効果が高いとはいえ100%ではないので、接種後の感染(ブレークスルー)が起きるのは想定内だ。ただ、南アフリカで最初に見つかったベータ株以外のこれまでのウイルス株は、接種終了後は、感染してもウイルスが体内で増えにくくなり、他の人にうつしたり、重症化したりするのを防ぐ効果があるとされてきた。

 しかし、デルタ株の場合、その効果が弱くなる恐れがある。マサチューセッツ州の集団感染では、入院した5人のうち4人はワクチン接種者だった。ブレークスルー感染が起きた127人と、ワクチン接種未完の感染者84人のPCR検査のデータを比べた結果、ワクチン接種をしていた人も、接種未完者と同じ程度のウイルス量が検出され、ワクチン接種が終わった人も他の人にうつす可能性があるとわかった。

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