自分の考えをしっかりと持ちながらも、どこか清々しさや、しなやかさを感じさせる江口。仕事に対する姿勢にもそんな人柄がにじみ出ている。
「役を演じる上で意識していることについて、『なるべく人の言うことを聞こうというくらい』と、取材に答えていたこともありました。自分は人の意見を聞いたほうが、演技が豊かになる気がするのだとか。また、仕事はスケジュールが合えば受けるというスタンスで、作品を選ぶこともなく、オファーをもらえば大体はやるそうで、心情としても『そうか、今回はこれなんだ』と思うくらいだそうです。もはや、ひょうひょうというよりも達観の境地に至った感もあります」(同)
■中卒アルバイト生活の苦労人
こうした江口の仕事に対する姿勢は、女優としては遅咲きだった彼女の過去が関係しているのかもしれない。女性週刊誌の芸能担当記者は言う。
「本人が各所で語っていますが、江口さんは中学を卒業した後は高校に進学せずにアルバイト生活を送っていたのは有名な話。父親は定職につかず、経済的にも余裕がなく、お小遣いもなかったそうです。その後、19歳で上京し、3畳1間、風呂無しのアパートに住み込みで新聞配達をしていた苦労人。若い頃から社会でもまれた人生経験が今の達観した雰囲気につながっているのかもしれません。ひょうひょうとした人は執着心がないとも言われますが、江口さんの場合も必要以上の欲や野望を持たず、安定した精神状態で仕事に取り組んでいるからこそ、しっかり結果も出てブレークにつながったのだと思います」
ドラマウオッチャーの中村裕一氏は江口の魅力をこう分析する。
「『どこにでもいそう』だけど『どこにもいない』。これが彼女の一番の強みでしょう。特に近年は、『わたし、定時で帰ります』でクセのある中華料理店の女主人を演じたかと思えば、『半沢直樹』では国土交通大臣、『俺の家の話』では名門能楽師の長女、『ドラゴン桜』第2シーズンでは学園理事長と、まるで出世魚のように役柄がパワーアップしています。どれも他にはない存在感とリアリティーを醸し出しており、今、勢いがある女優の1人であることは明らかです。しかし、本人はまったく浮かれている様子もない。そんな地に足のついた、落ち着いた演技ぶりも人気の理由の一つなのだと思います」
いまや日本のドラマ、映画に欠かせない女優となった江口。どんな役でも視聴者を引き付けられる逸材は、主演女優となって、いっそう才能を開花させそうだ。(丸山ひろし)