原発口と二次口をつなぐのが瘻管だ。単純な形の瘻管は、長さが2~3センチ程度だが、組織の中を複雑に走る地下トンネルのような形になるものや、肛門から奥側(直腸側)にのびるような瘻管もある。瘻管の場所、深さ、複雑さなどで、重症度が判別される。
痔ろうは、薬などによる保存療法はあまり効果が見込めず、自然治癒するケースも少ないため、手術が治療の中心になる。
第一選択となるのが瘻管切開術/開放術だ。切開術は原発口から二次口まで、瘻管をすべて切除する。開放術は瘻管の一部を残して切除する。どちらも瘻管の走行がそれほど深くないケースでは、根治率の高い術式となる。
手術の合併症として、術後の出血、感染があるが、気になるのは排便障害(便失禁)だ。肛門周囲には肛門の開閉にかかわる内肛門括約筋や外肛門括約筋などの組織がある。痔ろうがこれらの筋肉を貫いていることも多く、手術で筋肉にダメージを与えるリスクもある。そのため、術後、意思に反して便が漏れてしまう便失禁が起こり得る。おなかクリニックおしりセンター部長の羽田丈紀医師は次のように話す。
「痔ろうの複雑さや数にもよりますが、ほとんどは手術の傷が回復する、術後2~3カ月くらいで括約筋の機能も回復するので、日常生活に困るようなことはありません」
切除部分が多くなり、便失禁のリスクが高くなるケースでは、可能な限り括約筋を残す・傷つけない「括約筋温存術式」が適応される。「シートン法」もその一つだ。
シートン法は瘻管に治療用のひもやゴム(シートン)を通して輪状に結び、シートンを通した部分の組織が再生しようとする力を利用して、時間をかけて瘻管をなくす方法だ。周囲の組織へのダメージが最も少ない方法で、患者の希望も含めて、痔ろうが複数個ある、深いところを走っているなどの場合に適応される。
■放置せずに専門病院の受診を
痔ろうを悪化させないためには、肛門に負担がかからないような生活を送ることが第一となる。腸の調子を整えて下痢や便秘を防ぎ、アルコールや辛い物を控えるようにしよう。また、禁煙も重要だと羽田医師は言う。