「当院での患者さん対象のアンケートでは、痔ろうの人の喫煙率は50%以上でした。いぼ痔ときれ痔の人は20%前後だったので、痔ろうの人は明らかに喫煙率が高い。喫煙によって粘膜が弱くなって菌が入りやすくなるのでしょう。たばこは他の生活習慣病にも悪影響を及ぼしますから、禁煙をおすすめしています」
悪性化しないいぼ痔やきれ痔と異なり、痔ろうは長年放置するとがん化する場合がある。また、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)との関連が強いとされている。IBDは厚生労働省の指定難病で、10~30代に好発する。腸の粘膜が炎症を起こし、それが肛門周辺にも及んで痔ろうを併発しやすい。IBDと診断された人のうち、痔ろうで受診してIBDが見つかる症例が30%以上といわれている。
悪性化を防ぎ、他疾患と鑑別するためにも、痔ろうが疑われたら、肛門専門医を受診しよう。
「痔ろうの治療には肛門疾患の専門的な知識と技術が必要です。可能なら、肛門周囲膿瘍の段階から肛門を専門に診る病院への受診をおすすめします」(松尾医師)
(文/別所文)
※週刊朝日 2021年9月10日号より