■「エコ」に甘えない
サーキュラースイーツは生ごみの再利用とともに、地方で生産した農作物を加工・販売する取り組み。渋谷スクランブルスクエアから出た生ごみは、日立セメントのバイオプラント(茨城県土浦市)で肥料になり、茨城大学でサツマイモ栽培に使われている。それを原料に渋谷発のスイーツを商品化した。
これらの商品はセンスの良さも評価され、パートナー企業とともに来年1月をめどに量産化が決まっている。「エコという言葉に甘えず、信念を持って創意工夫を重ねたものが生活者の心に響くはず。渋谷に集う優秀なクリエーターや感度の高い人たちの協力を得て推進できるのは大きな強みです」(坪沼さん)
その一人が、渋谷肥料の商品開発ディレクターを務める慶應大学総合政策学部1年生の清水虹希さん(19)。中学時代、洋菓子店の職場体験で大量のお菓子が捨てられているのを目の当たりにし、食品ロスに関心をもった。清水さんは「自分はどんな未来で生活したいのか」という感覚を大事にしている。
渋谷肥料では、代表の坪沼さんと最年少の清水さんも強みを生かし合う関係だ。
「経験や技術よりも、物事をどういった目線で見ているかという視点が大事。世の中をより深く、鋭く捉えようとしている人が社会を動かす原動力になると思っています」(坪沼さん)
坪沼さんは今後、渋谷肥料で培ったビジネスモデルを他地域にも応用し、循環型経済の輪を広げたいと考えている。来年中には株式会社化も視野に入る。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年9月6日号
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