「渋谷肥料」が生み出した手作りせっけん「cre-cle」。体験型のワークショップを通じて参加者も実際に作ることができる photo Hiroshi Takano(cre-cle)
「渋谷肥料」が生み出した手作りせっけん「cre-cle」。体験型のワークショップを通じて参加者も実際に作ることができる photo Hiroshi Takano(cre-cle)
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生ごみからできた堆肥に植物の種と土を組み合わせた栽培キット。渋谷のビルの屋上で植物を育てコミュニティーで収穫を楽しむこともできる(渋谷肥料提供
生ごみからできた堆肥に植物の種と土を組み合わせた栽培キット。渋谷のビルの屋上で植物を育てコミュニティーで収穫を楽しむこともできる(渋谷肥料提供
渋谷の生ごみから生まれた肥料。これで育ったハーブからコスメやコーラを生み出す(渋谷肥料提供)
渋谷の生ごみから生まれた肥料。これで育ったハーブからコスメやコーラを生み出す(渋谷肥料提供)

 世界有数の繁華街、東京・渋谷。生ごみの量も膨大で、「消費の終着点」の顔ものぞかせる。そんな状況を変えようと、若手の有志が立ち上がった。AERA2021年9月6日号の記事を紹介する。

【写真】渋谷の生ごみから生まれた「渋谷肥料」がこちら

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 東京・渋谷を「消費の終着点」から「新しい循環の出発点」にシフトできないか。そんな問いを掲げるプロジェクトを10~30代が中心となって進めている。渋谷の飲食店などが出す生ごみから、新たなサーキュラーエコノミー(循環型経済)のモデルをつくり出す「渋谷肥料」という取り組みだ。代表の坪沼敬広さん(35)は言う。

「ネガティブな面もクリエーティブな視点で捉え直すことで、ポジティブな循環に変えることができます」

 坪沼さんは大学卒業後、デザイン業界での下積みを経たのち独立。クリエイティブディレクターとしてさまざまな商品企画を手掛けてきた。

■生ごみを堆肥に変える

 渋谷はきらびやかな国際都市の顔を持つ半面、ハロウィーンで集まった人が大量のごみを残すなど「消費の終着点」という負のイメージもある。坪沼さんはこうした課題に向き合おうと、渋谷スクランブルスクエアの交流施設「SHIBUYA QWS(キューズ)」のイベントで知り合ったメンバーと共に構想を提案。20年2月に「未知の価値に挑戦するプロジェクト」として採択されたのを機に、キューズを拠点に取り組みを始めた。

 渋谷区内から出るごみの7割が事業系。うち半分近くが生ごみと推計される。坪沼さんらが生ごみを肥料化し、これを活用して商品を生み出して渋谷の中で循環させる仕組みづくりだ。これまでに「サーキュラーキット」「サーキュラーコスメ」「サーキュラースイーツ」の3分野の商品開発に取り組んだ。

 サーキュラーキットは生ごみを堆肥(たいひ)化して、植物の種や土と組み合わせた栽培キット。購入者が渋谷の自社ビルでベビーリーフなどを栽培し、地域のコミュニティーづくりにも活用されている。サーキュラーコスメは渋谷のビルの屋上で栽培したハーブを用いた雑貨やコスメ。現在はハーブをブレンドしたオリジナルのクラフトコーラ「渋谷コーラ」の商品開発も進む。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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