コーンフレークは家にあるのに、どうしても今買わなければいけないんだ、と思い込むのだ。
どうしても買いたいのに列から離れたくない、その時に自分の気持ち、身体はどういう状態になるかを実感して、再現する。
そういった、不自然に自分をコントロールした状態に保ちながら、台詞を言っていく訳だから、ちょっとしたことで揺らいでしまう。
そして同じように演技している相手と気を通わせて影響を与え合うのだから、常に綱渡りなのである。
ただでさえ、覚えたと思っても時間を置くとぼんやりしてくる。いったん頭を切り替えて献立を考えたら、すっかり忘れていることもある。
夜、寝る前にざっと覚えてから寝ると、翌朝頭に残っているのは半分くらいである。昔はもうちょっと記憶が長持ちしたもんだ。
偉そうにメソッドとか言ったが、結果、台詞を完璧に覚える方法など、無い!
むしろ覚えなくても何とかなるとすら思い込もうとしている。
ああ、常に綱渡り。
不安と緊張を飼い慣らし、ひた隠し、やっていくのである。
■水野美紀(みずのみき)
俳優。ドラマ・映画・舞台で活躍中。<出演情報>日本テレビ系ドラマ「ボクの殺意が恋をした」に出演中(毎週日曜22:30~)。10月7日から新国立劇場 小劇場にて作・演出・主演を務める舞台『2つの「ヒ」キゲキ』を上演する。レギュラー番組は、フジテレビ系バラエティ「突然ですが占ってもいいですか?」毎週水曜22:00~、読売テレビ「水野美紀の映画生活(シネマライフ)」毎週金曜22:54~<関西ローカル> http://www.ytv.co.jp/cinemalife/
【書籍『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』好評発売中】