
デビュー50周年を迎えた松任谷由実さん。彼女がデビューするまでを描いた小説『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』を10月に出した山内マリコさんと、ザ・フィンガーズの元ベーシストで、荒井由実さんが世に出る前から交流があったシー・ユー・チェンさんが、ユーミンについて語り合った。
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山内マリコ:チェンさんとユーミンの最初の出会いはどんな感じだったのですか。
《シー・ユーは視線をベースから離さず、黙ったまま再びうなずいた。
由実はその青年の、一挙手一投足に目を奪われた。》
『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』(本文から)
シー・ユー・チェン:僕はフィンガーズというバンドをやっていたのですが、バンドのたまり場的なところによくユーミンが顔を出していたんです。まだ彼女がデビューする前で、本当に音楽が好きで、興味にあふれて、すごく感覚が鋭い少女という記憶が強く残っています。
山内:フィンガーズの追っかけとして現れたとき、ユーミンは他の娘(こ)と違っていたんですか。
チェン:全然違う。ユーミンみたいな娘は誰もいなかったね。当時、FENが唯一の音楽のリソースで、洋楽のレコードは半年遅れで日本のヤマハや山野に出る時代に、ユーミンは自分のアンテナにひっかかり、僕たちが好きそうなLPをBX(アメリカ軍の基地内の売店)で買って持ってきてくれた。僕たちが求めている音楽の方向性を理解していたんです。だから、ユーミンが来たら何か面白い話ができそうだなって、みんなが思っていましたね。
山内:追っかけでそこまでの存在になるのがすごい(笑)。
チェン:まだショートヘアで、ちょっとニキビがあってね。探究心の強い、面白い娘というのが最初の印象。僕がレッド・ツェッペリンを初めて聴いたのは、ユーミンが持ってきたレコードでした。
山内:ユーミンは自分をフィンガーズの参謀だと思っていたそうですね。フィンガーズは「尖(とが)った」バンドでしたけど、その参謀というのが、かっこいい。