山内:川添さんは当時のキーパーソンですね。ところで64年のビートルズはストレートなラブソングを歌っていたのに、5年もするとサイケデリックな音楽になった。1、2年違うと世界が変わっていく時代だったんだなと調べていてわかりました。

チェン:50年代後期のアメリカはそれまでの価値観に不信感を持ち、世俗から離れて酒やドラッグなど、やや過激な方法で自分を見つけようとしたいわゆるビートニクス(ビート・ジェネレーション)、そして60年代後期はベトナム戦争下に誕生したヒッピーのフラワーチルドレンが、意識の世界を探究しようとマリフアナやLSDによって、自分が組織に入って歯車の一つで人生を終えていいのかと問い始めた時期でした。“自分”の意識を広げていきながらも共同体的な価値観を見つけようとし、社会への反発としてロングヘアになっていった時代背景があります。しかし、そういう人たちもその後結婚し、組織に入り、以前と同じトラップに入ってしまった。それが僕たちの世代です。

山内:日本ではベビーブーマー世代ですよね。ユーミンはそれよりも下の世代で、団塊の世代の人たちがGSで時代を切り開いている姿を見ていた。でも2年くらいでGS人気が下火になると、音楽から離れていく人も多かった。そのブームの終わりを見届けた後、細野晴臣さんたちキャラメル・ママの力もあって、いよいよユーミンが登場する。

チェン:僕たち団塊の世代が自ら時代を切り拓いていったのですが、パラレルに素敵な大人たちのお手本がありました。キャンティ(東京・飯倉のイタリアンレストラン)の川添浩史さん(象郎さんの父)やタンタン(妻の梶子さん)を中心とした人たちが、表層的ではなく、こういう日本文化をつくっていきたいという、確固とした信念とビジョンを持って時代をリードしていました。僕たちはこういう人たちを見て、かっこいい大人がいるんだな、自分たちももっと文化的になりたいと影響を受けたんです。

山内:戦争を経験した世代は、これからこの国をどうしていこうかという意識がとても強いですね。

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