「よく眼鏡橋に例えるのですが、歯列がアーチ状にきれいに並んでいれば頑丈で長持ちしますが、一本でも歪みや抜けがあると、そこを起点にして歯列全体が崩壊していってしまいます。歯列の歪みは自然に治ることはありません。崩壊が進むと、隣り合う歯が重なってしまったり、抜け落ちてしまったりすることもあります」

 問題は、見た目が悪くなることだけではない。歯が重なることで、歯ブラシや歯間ブラシでは磨けない歯ができてしまい、虫歯や歯周病の温床になってしまうのだ。

 では、中高年になってから歯列矯正をしても間に合うのだろうか。

「矯正することは可能です。ただ、10代や20代とは異なり、矯正の目的が、現存する歯をいかに延命させるか、一生自分の歯で噛むことができるか、という点に変わってきます。場合によっては、残せない歯も出てくるため、残った歯で口内を清潔に保てるように環境を整えていくこともあります」

 一方、歯や骨の状態によっては矯正できない場合もある。歯列矯正は、長期間一定の弱い力をかけ続けて骨を変化させることで、少しずつ歯を動かして歪みを解消していく。そのため土台となる骨(歯槽骨)の状態がよくないと、圧力をかけられないケースや、逆に歯の寿命を短くする恐れもある。

「ただ、矯正が必要な歯は、見方を変えれば『放置しておけばいつかは抜けてしまう歯』とも言えます。それならばダメ元で矯正にチャレンジして、歯の延命に成功された中高年の方もいらっしゃいます。矯正治療は、2年近くに及ぶ場合もあるので、最初に担当医とメリットとリスクをよく話し合ってから治療に臨むことが大切です」

 歯列矯正は、ワイヤー装置による治療が主流だが、現在は透明な樹脂製のマウスピースを使った方法もある。

「マウスピースは、個人の歯列の形状に合わせてオーダーメイドできるため、ワイヤー装置に比べ歯にかかる圧力の調整がしやすく、歯周病の人にはリスクが少ない方法です。ワイヤー装置より痛みが少なく、歯磨きがしやすいのも特長ですね」

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