費用は、動かす歯の本数と治療期間によって変動するが、半年ほどかけて数本を動かす「部分矯正」であれば20万円から30万円ほど。上下全体の歯列を整える場合は100万円程度が相場だという。自費診療のため、治療費は全額自己負担となる。

 また、歯の健康を長く保つためには、治療後のメンテナンスも重要だ。

「『後戻り』と言って、矯正が終わったあと放置しておくと、歪みが元に戻ってきてしまうのです。そのため矯正後も、毎日睡眠時にリテーナー(保定装置)を装着して形をキープする必要があります。高齢になると、若い頃に比べて骨の量も減るため、メンテナンスを怠れば乱れるのが自然と考えたほうがいいでしょう」

 親知らずを放置したことで、口腔内トラブルが起こるケースもある。

 そもそも親知らず(智歯)とは、10代後半から20代以降に生えてくる第3大臼歯のこと。人により斜めや真横に向かって生える、歯肉に半分埋まっている、顎の骨の中に完全に埋まっているなど、生え方に大きな差が出るのが特徴だ。ほかの臼歯のように、上下に真っ直ぐ生えてくることはほとんどないため、十分に磨くことができず、智歯周囲炎という炎症を起こしたり、虫歯や歯周病、口臭の原因となったりすることが多い。

 東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック(中央区)では、月に40~60件前後、親知らずの抜歯を行っている。同院の新谷悟院長によると、親知らずの患者の大多数は30代以下の若者だが、50代以上の中高年も月に1~2人ほど来院するという。

「50代以上で抜歯を行う方は、それまで全く症状が出なかったか、歯を抜くのが嫌で限界まで痛みを我慢していたかのどちらかが多いです。膿や炎症などは抗生剤で抑えられますが、根治はできないため、むしろ症状を悪化させてしまうことが少なくありません」

 智歯周囲炎が進行すると、顎の骨が溶けるだけでなく、親知らず周辺の骨が硬化してしまうこともある。そうなると抜歯が困難になり、通常20分程度で終わる処置が1時間以上かかるなど、患者の体への負担も大きくなるという。

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