「それから親知らずに限ったことではありませんが、炎症を我慢してしまうと顎骨骨髄炎を起こして、歯が激しく痛んだり、唇が痺れるといった症状が出ることがあります。難治性骨髄炎になると、全身麻酔を施して顎骨の切除手術をしなければならなくなることもあるため、症状が出たら我慢せずに早めに歯科医院を受診してください」

 ただ、やはり歯を抜くとなると恐怖心がつきまとう。抜歯の痛みやリスクはないのだろうか。

「抜歯時の痛みについては、麻酔がしっかり効いていればほとんどありません。不安な気持ちが強い方は、ストレスを和らげる効果がある笑気ガスを使った治療を選択することもできます。抜歯後は、周辺が腫れることがありますが、おおむね1週間程度で治まります。抜いたあとは、くぼみができて食べ物のカスがたまりやすくなるので、傷痕が完全に治癒するまで半年くらいは気になるかもしれません」

 また、ごくまれにではあるが、抜歯時に下顎の神経を傷つけてしまい、唇や舌に痺れが出る場合がある。ただ、確率的には全体の1%ほどで、仮に痺れが出た場合でも99%は自然に治るそうだ。

 では、全く症状がなければ、親知らずを抜かずに済ませることもできるのだろうか。

「親知らずが上下に真っ直ぐ生えていたり、完全に骨の中に埋まっていて症状がない場合は、無理して抜く必要はないでしょう。ただ、女性の場合は、妊娠期に親知らずが腫れて高熱が出たり、その際に鎮痛剤や抗生物質などを投与したりすると、胎児に影響を及ぼす可能性があります。それから親知らずは、歯列矯正にもかかわってくるんです。親知らずがあることで『後戻り』が起きたり、ほかの歯を動かせないので結局抜くことになるというケースもあります」

 また、親知らずが第2大臼歯(親知らずの前に生える奥歯)を横に押すように生えることで、第2大臼歯が虫歯になって抜かざるを得なくなったり、歯列が崩れたりすることもあるようだ。こうした将来的に起こり得るトラブルを歯科医と検討したうえで、抜歯するかどうかを選択したい。(ライター・澤田憲)

週刊朝日  2021年9月17日号より抜粋

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