八方塞がりな状況だが、岸田首相は強気を維持しているとの観測もある。岸田首相は10月29日夜、自民党の麻生太郎副総裁と都内のホテルで会食。麻生氏周辺によると、この際、麻生氏は周囲に「来年5月の広島サミットを成功させれば、いつでも衆院解散を打てる。政権にこれだけ逆風が吹いていても『岸田降ろし』の動きは見られない。首相にはまだチャンスがある」と話したという。
「ポスト岸田」候補を見渡しても、河野太郎デジタル相は所属する麻生派内に支持が広がらない。茂木氏は後継首相に意欲を見せるが、相変わらず人望がないのがネックだ。ライバル不在の状況に、与野党を問わず「当面はずるずると岸田政権が続く」(日本維新の会幹部)との見方は強い。
だが、低支持率に公明党との摩擦も響いて統一地方選で大敗すれば、岸田首相の責任問題からポスト岸田政局となる展開も十分あり得る。政府関係者はこう話す。
「自民党議員の半数近くは学会票に依存している。一方の公明党はたとえ自民党の『下駄の雪』と揶揄(やゆ)されても、与党としてのうまみを手離したくない。両党は依存し合っているので、完全に割れることは考えづらい。新法を何とか年内に可決させたい思いは強いが、玉虫色の内容で強行採決すれば、有権者の信頼を裏切ることになる。結局、野党案を8割ぐらい丸のみする内容になるのではないか」
(本誌・村上新太郎)
※週刊朝日 2022年12月2日号