そもそも、自民党と公明党との関係は、今年7月の参院選前後からギクシャクしていた。一部の選挙区で、自・公両党の本部がそれぞれの選挙区候補を自動的に推薦してきた「相互推薦」方式が取りやめられるなど、溝が露呈したのだ。与党関係者によると、衆院選挙区の「10増10減」の議論でも、公明党幹部は自民党の茂木敏充幹事長に対し、選挙区の数が増える東京、千葉、埼玉、愛知の4都県で公明党候補を立てる場所を新たに一つずつ確保し、当該選挙区では自民党候補の擁立を見送ってほしいと“強気”の要請をしたとされる。
山口代表は11月8日に岸田首相と会談し、新法の臨時国会提出へ努力することで合意した。それでも、公明党内には「新法が宗教界全体の活動を及び腰にさせるのではないか」(党幹部)という疑念が根深いという。ある与党関係者はこう語る。
「この問題以外でも、今後の『自民党的』な政策への警戒感が公明党の中で高まっている。ウクライナ情勢などを背景に日本周辺の安保環境が激変しており、年末に予定する『安保3文書』の改定も、敵基地攻撃能力の保有など踏み込んだものになるはず。公明党との折衝は難しくなるだろう。自民党悲願の憲法改正も維新の躍進により現実的になりつつあるが、憲法改正に一貫して消極的な公明党とどう折り合いをつけていくかも頭が痛い」
■ポスト岸田不在 低空飛行続く?
自民党にとって苦しいのは、今や政権が「自走不能」なほどボロボロなことだ。岸田首相は山際大志郎前経済再生担当相に続き、死刑を軽んじるような発言をした葉梨康弘前法相を更迭。閣僚の「ドミノ辞任」を狙う野党の追及がやまない。16日の参院倫理選挙特別委員会では、寺田稔総務相が自身の政治資金を巡る疑惑を再び追及され、20日には辞任した。このうえ公明党との関係も揺らげば、岸田政権はさらに土俵際に追い込まれる。前出の角谷氏がこう語る。
「旧統一教会問題では、公明党・創価学会に配慮すると結果として旧統一教会を守っていると見られ、国民の怒りを買ってしまう。公明党にも厳しくせざるを得ないが、上手にさじ加減をコントロールしないと自公の信頼関係が崩れかねない。茂木幹事長が調整に乗り出してきましたが、ソフトランディングは非常に難しいでしょう」