鄭氏はその後、韓国当局に強姦致傷などの容疑で逮捕・起訴された。2018年に懲役10年の刑期を終え出所した。現在は、摂理が「聖地」とする施設にいるとされている。


 摂理からの脱会相談などを長年受けている、全国霊感商法対策弁護士連絡会の渡辺博弁護士はこう指摘する。


「鄭氏に近しい信者が、鄭氏が好む容姿の女性信者を探し、日本を訪れた鄭氏に“差し出す”というあまりにひどい手口でした。その後、自殺したり精神を病んだりした女性も複数いましたが、周囲への発覚を恐れて被害届を出す人がおらず、鄭氏を日本で処罰することはできませんでした。現在、鄭氏は韓国から出国できないとはいえ、世界中から韓国に送られ、今も似たような被害を受けている女性がいてもおかしくないと考えています」


 日本では刑事事件化されなかったことから、ある脱会者によると、日本の現役信者たちは事件は冤罪(えんざい)だと信じ込んでいるのだという。教団が、勧誘した人をマインドコントロールし、信者として“教育”していく中で、鄭氏は不当に逮捕されたと刷り込んでいくのだという。

 カルトと呼ばれる宗教団体は複数あるが、その中でも各地の大学が現在、最も警戒しているのが摂理である。徹底して正体を隠し、大学側の目が届かないSNSでの勧誘を活発化させているためだ。


「摂理のメンバーは、男性も女性も、見た目の好感度が高いメンバーが多いとされていて、勧誘されている側も疑いを持たない。これまでのカルト宗教と大きく違う点です。そして、勧誘した若者を『教育』していく手法も、非常に緻密で戦略的です」(岩崎牧師)


 勧誘の入り口も、非常に“魅力的”に仕上げているという。


 例えばSDGsや医療関係者の講演会を開き、興味のある学生なら誰もが憧れそうな優秀な社会人の信者を呼ぶ。時には信者ではない大学教授や有名人に講演会への出演を依頼し、“広告塔”として利用する。


 国際交流や留学、ボランティア活動に興味がある学生を対象とした交流会を開き、そうした活動経験がある先輩の信者を呼ぶ。

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警戒を強める有名大学