正体を隠して勧誘する宗教団体は摂理に限らないが、「勧誘の手法が、大学の対策のさらに先を行っている」(岩崎牧師)ことが、各大学が危機感を強める理由だ。青山学院大の塩谷直也・宗教部長はこう批判する。


「最近は、自己肯定感が低い学生がとりわけ多いように感じます。カルト宗教は、自分が受け入れられている実感が欲しい学生や、人生についてまじめに考えている学生を狙ってアプローチを繰り返します。信仰とは、その人が主体的に何を信じるかであって、マインドコントロールによってその人の考えを奪い、信じさせることではありません。正体を隠して勧誘すること自体、相手の自己決定権を侵害しており明かな人権侵害です。マインドコントロールによってその人の貴重な時間を奪い、人生そのものを奪う。極めて犯罪的な行いだと思います」


 渡辺弁護士は「正体隠しの勧誘は、その人の信教の自由を侵害するもので、民法709条の不法行為に該当し、違法です」と指摘する。ただ、あらゆる手段での勧誘が横行しているのが現実で、「勧誘の入り口で摂理だと見抜く方法はありません」とも言い切る。


「学生さんたちは、魅力的な集まりに参加した時、単純に『すごい』と思ってしまうのではなく、『すごい』と思わせて引きずり込んでいく手口があることを頭に入れてほしい。親も、いい大学に入れたと安心せず、お子さんがそうした会に参加していないか気にかけてほしい。娘が参加し始めた会をのぞいたら、あまりに爽やかな男女ばかりなので逆になにかおかしいと感じ、正体に気づいたケースもあります」(渡辺弁護士)


 では、摂理側はどう答えるのか。摂理に事実確認を求めたところ、文書で回答があった。


 まず「正体隠しの勧誘」については、「偽装勧誘はしていない」「聖書の話をするときは宗教であることを相手に伝えている」と回答。「教祖の性的暴行の過去」については、「さまざまな疑問点がある」としたうえで「(最初に逮捕された)中国では現場検証もされて嫌疑は認めらなかったのに、韓国当局は現場検証もせずに有罪判決を下した」と主張した。その他、さまざまな主張を展開した。

【後編】「摂理」が大学での勧誘活動を活発化 直撃取材に教団は「偽装勧誘はしていない」と回答>では、摂理の「反論」の中身を詳報する。

(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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