「摂理」の教祖・鄭明析氏(画像はキリスト教福音宣教会の公式HPより)
「摂理」の教祖・鄭明析氏(画像はキリスト教福音宣教会の公式HPより)
この記事の写真をすべて見る

 2006年、教祖による女性信者への性的暴行疑惑などで日本で社会問題化した「摂理」(キリスト教福音宣教会)が近年、日本国内で大学生を狙った勧誘活動を活発化させているとして、全国の大学が警戒を強めている。そのターゲットは医師や法曹界を志す成績優秀な学生、環境問題やSDGs(持続可能な開発目標)、国際貢献などに関心を持つ「意識の高い」大学生たちだ。サークルやセミナーを装う昔からよくある手口だけではなく、コロナ禍の今、SNSを駆使し、あるときは新入学生の相談に乗る大学OB、あるときは就職活動の指南など、その正体を巧妙に隠して学生たちに近づいているという。

【写真】男性と性的関係を持つと「地獄に落ちる」と教えられたカルト2世の女性はこちら

*  *  *
 九州のある大学。一昨年の秋、女子学生Aさんは、同級生の女子に誘われて、学食で開かれたイベントに参加した。その場にいたのは同じ大学の女子学生や、社会人の女性だった。おかしな雰囲気は一切なく、このイベントをきっかけに仲良くなり、ハロウィーン会に参加したり、社会人の自宅でみんなで食事をしたりと交流を持つようになった。時には「グローバルな人材になろう」というテーマで議論し合ったこともあった。若い世代が自分を向上させるため、そうした議論をするのは不自然ではない。


 だが12月。クリスマス会の席で、突然、仲間たちから聖書をすすめられた。その後、新型コロナウイルスの影響で対面の機会が減り、聖書を返却できなかったこともあって、オンラインでの聖書の勉強会や朝の礼拝に誘われるようになり、ずるずると参加してしまった。


 不信感を抱いたAさんが関係を切ろうと、みんなが集まる礼拝の場に聖書を返しに行ったところ、意に反し「新メンバーのAさんです」などと周りに紹介された。その後、摂理の教祖である鄭明析(チョン・ミョンソク)氏の動画が流れ、やっと正体を悟った。


 同じ大学の女子学生Bさんも、「現役の医療系大学生の話が聞けるイベントに参加してみない?」と2人組の女性に話しかけられた。一人は同じ大学の学生で、一人は社会人だった。

次のページ
「よかったら聖書を読んでみない?」