対して金網は残忍なイメージがあったり金網の間にある柱で見えにくかったりする点はあるが、リング外へ出てしまったり、ロープ際でのドントムーブが発生することもなく、試合の流れが妨げられない。レフェリーの介在が減じられることもあり、ケージが総合格闘技において広く試合場として取り入れられているのはそういった理由によるのであろう。

 グラップラーがロープ掴みによりテイクダウンをしのがれ、相手に反則・減点が与えられても、スタンドで再開し打撃でKOされてしまっては元も子もない。テイクダウンの後で寝技を進め、パウンドかサブミッションで勝っていたかもしれないが、「たられば」の話となってしまう。だが、この場合の「たられば」はルールや試合場の整備で防げる、本来必要のない「たられば」だ。

 試合場がケージとなった場合、片方が金網を背にした状態でのテイクダウンを巡る「壁レス(リング)」と言われる攻防、またリングのように追い込むことが困難となるため違った組み立ても必要となり、試合のための練習、戦略が異なってくる。現在は世界に水をあけられている日本MMAだが、金網をネイティブに育つ今後の世代は、あるいはここから世界で通用する人材が生み出されていくかもしれない。

 翻ってRIZINでは世界的流れにあえて乗らず、リングで独自の世界とポジションを確立させるのも一つの手であると考える。遠く離れたUFCを追うより、オンリーワンを目指す方が得策であるかしれない。

 だが、そうであっても近頃散見するリング使用によるデメリットを解消するのは急務であり、榊原信行RIZIN CEOも今夏放送された番組でリングの作り変えに言及する場面があった。

 ロープ掴みや場外逃避は勝敗を逆にし選手の運命を左右する重大な反則であり、場外転落は大きな怪我の危険を伴う。選手が不利益を被らないようルール変更や新リングの導入、あるいはかつてDREAMで採用されたホワイトケージのように、金網の部分的導入や金網大会による新ブランドの立ち上げもよいのではないだろうか。