渋谷医師が続ける。
「中小の民間病院にコロナ患者の受け入れを求めるのは酷です。やはり大きな急性期病院でベッドを50床、100床と確保しないと対応できません。その役割は当然、公的病院が負うべき。国立病院機構や、尾身茂さんが理事長を務める地域医療機能推進機構(JCHO)はすぐにでもコロナ対策病院としてベッドを確保すべきです」
冬にかけて「第6波」が始まることが予測される。重症者用に既存の病院の病床を確保するとともに体育館やイベント会場などの臨時の施設を使って野戦病院をつくり、中等症の患者を収容する態勢づくりが求められる。
「いま専門家からロックダウン(都市封鎖)法制化を求める声が上がっていますが、ワクチン接種が進み、病床を確保して医療崩壊が防げればその必要はありません。英国のような罰則もないのに日本の国民は我慢強く行動制限しています。その真面目さに胡坐(あぐら)をかいて、国や専門家はやるべき対策を怠った。飲食店をスケープゴートにして自粛や緊急事態宣言をくり返しても社会が傷むだけです」
現在、日本では変異株による子どもの感染が急増している。渋谷医師はいま最も重要なのは学校対策だと話す。
「コロナは無症状感染があるので、症状がなくとも学校で定期的に検査を実施すること。日本はいまだにマイクロ飛沫と言っているが、主な感染ルートはエアロゾルによる空気感染です。教室にCО2モニターを置いて換気を見える化し、12歳以上の子どもと保護者、教師はワクチンを接種する。ワクチン、検査、換気、不織布マスクの4点セットで学校を成り立たせていくのです」
米国の事例にも学ぶべき点は多い。米国在住で、星槎グループ医療・教育未来創生研究所・ボストン支部研究員の大西睦子医師はこう説明する。
「米国では最も多い時で1日30万人もの感染者を出しましたが、医療崩壊を免れています。ライバル病院が協力して次々と臨時病院を開設し、患者さんの入院先を調整し合ってパンデミックに立ち向かったのです」