曲が出来上がってみると、曲調はフォークといいますか、日本人が心のなかで捨てきれない、永遠の温かみを感じさせるものにもなりました。

 歌詞を書くうえで具体的に思い浮かべたのは、こんな物語です。サラリーマンらしき人が電車から吐き出され、家へ帰る道すがら、夕景を眺めつつ、明日は今日より素晴らしいことを願う──。それを、自分がよく知る鎌倉駅西口の商店街を思い浮かべつつ書きました。

——物語は物語でも、「さすらいのRIDER」の場合は、B級のロードムービーを思い描いたというか、そこに主人公がいて、バイクがあって、道があり、どこにたどりつくのかわからない“さすらい”がある。

 ライダーが出てきたのは、もともと自分の憧れもあったと思うけど、僕の場合は曲から書くのでね。たまたまミュージシャンとセッションしてて、思わず口先から出た“ガンボ”という言葉が、発想のキッカケでした。ガンボは、ニューオーリンズの煮込み料理の名前です。郷土料理ですね。食べるのは誰だろう。バイクに乗ったライダーかもしれない……。そんな連想を働かせました。

 6曲目の「鬼灯(ほおずき)」になると、またちょっと違いまして。曲ができあがって、詞に取りかかろうというときに、まずはこの言葉を、レポート用紙に書いてみたんです。鬼の灯と書いてホオズキだということも、その時に初めて知ってね。神社の境内とかで開かれるホオズキ市を思い浮かべ、あれはいつ頃だったかなと思ったら、7月の初めなんですね。そこからじんわり、物語がにじんでいったんです。

 男女の姿がイメージされて、しかもこれは、戦時中、やむにやまれず生き別れた二人というか、自分の意思とは違う運命というところから、特別攻撃隊の人たちも浮かんできた。何度かテレビでドキュメンタリーを観たこともあって、胸を打たれた記憶があるんですが、曲を書いた段階では予期しなかった出口へと、こうして歌詞がたどり着いた。なのでこの曲の場合は、物語は物語でも、事実にも基づいた部分もあるというかね。

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