西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、2017年のドラフト1位の日本ハムの清宮幸太郎選手とヤクルトの村上宗隆選手を比較する。
* * *
どこの分野、世界もそうだが、小手先の巧(うま)さというものは成長を阻害する。本人がそのことを理解していればいいが、早熟でちやほやされたり、例えば、新入社員の中で人より要領がいいと、そのときは前に出られる。だが、本当の意味で将来性があるのは「強さ」を持った人間であり、経験から巧さを身につけた人間であろうと、私は考えている。
同じことが言えるのは、2017年のドラフト1位、日本ハムの清宮幸太郎と、ヤクルトの村上宗隆についてである。高校通算本塁打数から騒がれたスラッガーだけど、今や大きく差は開いてしまった。
村上は日本を代表するスラッガーに成長しつつある。9月19日には21歳7カ月で日本人最年少の100号に到達した。左打者の彼を見ていると、逆方向には球にパワーをぶつけるだけで本塁打になるという自信も感じるし、内角に来れば、思い切りたたける技術も感じられる。今、巨人の岡本和真と本塁打、打点の2冠を争っているけど、近い将来の三冠王を感じる風格がついてきている。
一方の清宮はどうか。イースタン・リーグで19本塁打(9月24日現在)で本塁打王争いをしているというが、すでに400打席を超えている。打率は2割そこそこだ。投手のレベル、狭い2軍の球場なら、倍以上の40発を打っていたっていい。
2人の差は歴然。カウントを作る能力があるかどうかだ。投手との対戦。投手が3球ともいいところに投げたら、どんな大打者だって打てない。じゃあ、どうするか。「打てる範囲の球、つまり失投を1球で仕留める」能力をつけることである。
投手からすれば、恐怖を感じる打者。つまり強さと怖さがある打者である。そういった能力を持った打者には慎重になる。つまり、打者有利のボール先行のカウントになりやすい。おのずとストライクが必要な状況にして、打者は狙い球を絞って勝負できる。