宮内庁は1日、秋篠宮家の長女眞子さま(29)が、複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断されていたことを明らかにした。PTSDのなかでも「複雑性PTSD」は、持続的に受けたトラウマ体験が引き金になるタイプのものだという。
そもそもPTSDとはどういう病気なのか。原因や症状について専門医に取材した、週刊朝日連載『新「名医」の最新治療』(2019年11月1日号)から紹介する。
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PTSDとは、死にそうになったり、重傷を負ったり、性暴力を受けるなど、生命の危機を感じるような出来事(トラウマ体験)を体験、目撃、繰り返し聞いたりしたことがきっかけで起こる。
成人の診断基準は以下の四つが1カ月以上続き、これらの症状により、日常生活に支障が生じる場合となっている。
(1)侵入症状(自分の意思と無関係に頭の中にトラウマ体験の記憶が当時のまま、入り込んでくるフラッシュバック)
(2)回避症状(トラウマ体験を想起させる状況や考えを避け続ける。このため適切な行動がとれない)
(3)感情と認知のネガティブな変化(自分が悪いという自責感、人を信用することができない)
(4)覚醒の亢進(精神的緊張状態が続き、集中困難やイライラ、不眠が起こる)
病気の概念ができたのは1970年代、アメリカでベトナム戦争帰還兵とレイプなど性暴力の被害者に共通の症状がみられたことがきっかけだ。武蔵野大学心理臨床センター・センター長の小西聖子医師はこう言う。
「PTSDはストレスなどの環境要因から起こってくる障害の一つで、生涯有病率は1・6%ととても身近な病気。誰にでも発症する可能性があります」
日本では阪神・淡路大震災をきっかけにPTSDの概念が広く社会に知られるようになった。
「日本では災害のほか、レイプなどの性被害や家庭内暴力(DV)、虐待などがPTSDのきっかけになりやすいことがわかっています。特に性被害を受けた人では発症率が高く、海外の大規模研究では被害を受けた人の約半数が発症しています」(小西医師)