■心理的な便秘の状態

岡田:「私が私に聴く姿勢」という表現、すごいと思います。ゲシュタルト療法の「自己内対話」がまさにそれです。

illustration 田房永子(AERA 2021年10月11日号より)
illustration 田房永子(AERA 2021年10月11日号より)

田房:私たちは生まれてきた瞬間から、おむつをはかされています。おむつって親や社会の事情なんですよ。赤ちゃんはいつでもウンチしちゃうっていう事情を、こっちの社会の事情で止めているわけです。私たちの生きる社会には秩序を守るためのルールがいっぱいあります。そのルールは「心」ではなくて「行動」の話です。とにかく周りをみて空気を読んで行動しましょうっていうことばっかり教わる。そんな中で自分の事情を自分に聴くっていう感覚自体を教わることがまったくない。自分の事情を聴かずに人のことばっかり聴かなきゃいけない、それで自分のことは押し込めているから爆発しちゃうんですよね。だけど実はそこが一番、生きるときに必要な感覚だということを学んだんです。

【右】たぶさ・えいこ/1978年生まれ。漫画家。著書に『母がしんどい』『大黒柱妻の日常』『キレる私をやめたい』『母乳がいいって絶対ですか?』など【左】おかだ・のりよし/1951年生まれ。公認心理師。著書に『実践?受容的な?ゲシュタルト・セラピー』、DVDに「キレる私をやめたい!」など(写真:本人提供)
【右】たぶさ・えいこ/1978年生まれ。漫画家。著書に『母がしんどい』『大黒柱妻の日常』『キレる私をやめたい』『母乳がいいって絶対ですか?』など【左】おかだ・のりよし/1951年生まれ。公認心理師。著書に『実践?受容的な?ゲシュタルト・セラピー』、DVDに「キレる私をやめたい!」など(写真:本人提供)

岡田:「自分で自分の事情を聴く」ということで言えば、悩んだり、窮屈さや不自由さを感じる人ってほとんど自分との対話ができてないんです。自分との対話ができるようになってくると楽になると思いますよ。

 あとは「排泄」の問題。ゲシュタルト療法とは感情・感覚にフォーカスしていくというセラピーです。感情を表出できないのは心理的には便秘のようなもの。結果的に自分を傷つけることになってしまうんです。昔は男は泣くもんじゃないなんて言われて育ったわけですよね。そうすると、泣きたいときに自分の中で「男は泣くもんじゃない」ってつぶやきが聞こえてきたりするわけです。結果的にぐっと自分の中に感情をのみ込んでしまう。強くのみ込んでしまった感情は、ずっと体の中にあり続けるんです。

田房:その感情をのみ込んだときと同じ状況が出てくると、キレてしまうんですよね。

(構成/編集部・三島恵美子)

AERA 2021年10月11日号より抜粋

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